私の特別演習のテーマは「コミュニケーション」です。それは、私自身の研究テーマでもあります。コロナ禍の下での「他者と離れている」「地方に居る」「自宅在住」といった状況は、このテーマにとって、かえって腕と頭のふるいようがあるのではないかと考えました。
―― 今回、自宅在住・地方在住という状況から生まれた習作のいくつか ――
祖父との生活の中で生まれた「交換あいうえお」。
家族共通の活動を素材にした「私の家には卓球台があります」。
近所の妙なコミュニケーションの後ろに法の存在を知った「フタの使い方」。
日本海と太平洋を映像的に繋げた「海響」。
遠く離れた二軒の家を一つの空間として扱った「家」。
人間の認知能力を使うことによって実際の距離や時間を乗り越えた「エしりとり」と「円環」。
(他にも、面白い作品がたくさんありますが、省略します。)
どれも「離れている」「閉じこもっている」からこそ生まれた映像表現といえます。これらの学生たちの習作映像を見ると、新しい発想が多く見られて頼もしささえ覚えました。
私自身も、今回の特別演習で、直接、教室で会えない不自由さ以上に、オンラインならではの教育の可能性を強く感じることになりました。
私の演習は、例年、グループワークによる映像制作が半分以上を占めています。この演習によって、どのように話し合い、そして力を出し合って、ひとつの映像を作りあげるかということを学んでもらいたいし、修士一年時の最初なので、各人の特性や性格などの、私の演習を通して、知り得てほしいとも思っておりました。
正直なところ、今だから言えることですが、特別演習が始まる前は、果たして、グループワーク中心の私の演習が成立するのかどうか、自信がありませんでした。
しかし、終わってみると、出来上がった映像が想像以上の面白さや新しさを持っていて、それは嬉しい驚きでした。特に、課題を出された直後の各チームの話し合いの様子を伺うに、例年と比べてまったく遜色のないやりとりが感じられ、私の心配は見事に杞憂と終わったのでした。さらには、それだけでなく、ZoomやGoogle Meetなどのonlineでの遠隔授業の可能性(くだけて言っていいなら、楽しさ)をも体感でき、将来的にコロナが収まった後でも、この教育手段を使っていこうと思っている自分がいる次第です。
佐藤 雅彦