教員と領域 | 映画専攻

学生は作品制作に向けて、領域別にゼミナール形式で専門的指導を受けます。また、自らの領域の学習だけではなく、他領域の基礎知識を学ぶ授業も用意されており、映画についての総合的な知識を深め、感性を高めることができます。作品制作に使用する施設・機材・備品はプロが使用しているものと同等クラスのものであり、講師陣には第一線で活躍する専門知識を持った多種多様なプロが揃っています。

監督領域

 

 

映画演出に対する理解と判断力、そして、作家性を実践的に身につける

専門家集団の共同作業である映画制作の中で、映画監督は作品に対して決定的な影響力を持ちます。 監督領域の学生は、授業やゼミで映画に対する理解を深め、実習作品では現場での判断力を研鑽し、自分ひとりだけでは作ることができない映画作品に自己の作家性をどう反映させるかという感覚を身につけていきます。

 

 

諏訪

映画表現技術 監督領域
諏訪 敦彦 教授

1960年生まれ。東京造形大学在学中にインディペンデント映画の制作にかかわる。卒業後、テレビドキュメンタリーの演出を経て、97年に『2/ デュオ』を発表し、ロッテルダム国際映画祭最優秀アジア映画賞受賞。『M/OTHER』でカンヌ国際映画祭国際批評家連盟賞受賞。その他の主な作品に『H/Story』『パリ・ジュテーム』(オムニバス)『不完全なふたり』(ロカルノ国際映画祭審査員特別賞)『ユキとニナ』など。完成された脚本を用いない独特の手法で知られる。

塩田

映画表現技術 監督領域
塩田 明彦 教授

1961年生まれ。大学在学中より8mmによる自主映画の製作を始める。1999年、『月光の囁き』『どこまでもいこう』を同日公開する。2001年、『害虫』がヴェネチア国際映画祭出品後、ナント三大陸映画祭で審査員特別賞を受賞する。『黄泉がえり』『どろろ』では国内興行収入30億円を越すヒットを飛ばすなど、メジャー系の娯楽映画とアートシアター系の作品を往復しつつ、映画を作り続けている。近作に『風に濡れた女』『麻希のいる世界』など。著書に『映画術・その演出はなぜ心をつかむのか』がある(同書は中国でも翻訳出版されている)。
『月光の囁き』『どこまでもいこう』『害虫』『黄泉がえり』『どろろ』『風に濡れた女』『麻希のいる世界』

脚本領域

 

 

知識を身につけ、作家性を確立する

脚本は言葉によって映像と音響を招くものです。すべてのスタッフ、キャストが創造することは脚本家が先んじて想像しておく必要があります。今後作品を発表する媒体は既存の場に限らず、ネット配信、ライブ表現などますます増えていくでしょう。脚本領域では、優れた作品を作るためにあらゆる知識を身につけること、どんな場においても表現出来る強固な作家性を確立することを目標としています。

 

 

大石

映画表現技術 脚本領域
大石 みちこ(大石 三知子)

東京生まれ。東京藝術大学美術学部卒業。会社勤務を経て2005年、東京藝術大学大学院映像研究科映画専攻脚本領域入学、田中陽造氏に師事。2007年同修了。主な脚本執筆作品に映画『東南角部屋二階の女』(池田千尋監督)、映画『ゲゲゲの女房』(鈴木卓爾監督)、映画『ドライブイン蒲生』(たむらまさき監督)、アニメーション『ヒバクシャからの手紙―貴女へ―』(いまばやしゆか監督)等がある。映画『ライク・サムワン・イン・ラブ(アッバス・キアロスタミ監督)』では日本語台詞監修をつとめた。

プロデュース領域

 

 

企画開発から作品公開まで、多岐に渡るプロデューサーの役割を実体験として学ぶ

この領域は、日本で唯一、映画プロデユーサーの育成を目的として生まれました。プロデューサーという仕事を真に理解するには、机上の理論や知識ではなく、実際に映画が製作される現場での経験が重要です。つまり、厳しい製作現場を身を持って体感することです。それは、企画の立案から脚本、予算の作成、契約、スタッフ編成、撮影、仕上げ、配給、宣伝プラン、公開、海外セールス、映画祭への出品そして資金の回収、映画プロデューサーはこういった映画製作すべての過程にかかわるということ、そしてその方法論を製作実習を通して具体的に学びます。現役プロデューサーである教員が製作する映画作品のスタッフとしてプロの現場を体験もします。そこから、自ら考え判断する力と独自の映画観を持ったプロデューサーを世に送りだします。それは、将来映画製作だけではなくあらゆるメディアで国際的にも活躍できる知力と体力を備えたプロデューサーに他なりません。

 

 

市山

映画表現技術 プロデュース領域
市山 尚三 教授 (R6.4.1着任)

1963年山口県生まれ。東京大学経済学部を卒業後、松竹に入社。現在はオフィス北野に在籍。主なプロデュース作品に竹中直人監督作品『無能の人』(91)、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督作品『フラワーズ・オブ・シャンハイ』(98)、サミラ・マフマルバフ監督作品『ブラックボード/背負う人』(00)、賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督作品『罪の手ざわり』(13)、舩橋淳監督作品『桜並木の満開の下に』(12)、等がある。また、2000年より映画祭「東京フィルメックス」のプログラム・ディレクターを務めている。

撮影照明領域

 

 

知識と技能だけでなく、チームワークやコミュニケーション、そして映像の審美眼を養う

撮影と照明はプロデューサー、脚本、監督などのイメージを自分というフィルターに通して具現化する領域です。作品を創るには幅広い知識と専門的な技術を身につける事は勿論ですが、他の部署とのコミュニケーションを重視して高次元の映像表現を求める志を高める事も習得して行きます。実習では撮影照明のチームワークでプロ仕様の機材を取扱いながら、個性や個人の技術を研鑽していきます。

 

 

谷川

映画制作技術 撮影照明領域
谷川 創平 教授

日本大学芸術学部 映画学科卒。映画、ドラマの撮影を中心に行う。03年度 文化庁芸術家在外研修員としてイギリスで研修。日本映画撮影監督協会理事。
主な撮影作品は園子温監督「紀子の食卓」「愛のむきだし」「恋の罪」「ヒミズ」呉美保監督「オカンの嫁入り」清水崇監督「魔女の宅急便」三木聡監督「転々」佐藤祐市監督「累」武内英樹監督「翔んで埼玉」「ルパンの娘」など。

美術領域

 

 

単なるテクニックにとどまらない知識と感性を身につける

映画に登場する家具、衣装、小道具といったものについては、時代や場所の状況が不自然でないだけでなく、その作品の雰囲気にふさわしいものを用意する必要があります。 そのためには非常に幅広い知識と感性が要求されます。 美術領域ではゼミと実習を通じて、単なるテクニックには留まらない物の有り様による演出的工夫や見識を学びます。

 

 

三ツ松

映画制作技術 美術領域
三ツ松 けいこ 教授 (R6.4.1着任)

1972年生まれ、千葉県出身。1995年日活芸術学院美術科を卒業後、撮影現場に見習いとし
て入る。小道具を3年ほど経験してから美術助手に転向。
主な美術作品に、是枝裕和監督『誰も知らない』『海街diary』『万引き家族』『怪物』、西川美和監督『ゆれる』『ディア・ドクター』『永い言い訳』『すばらしき世界』、池田千尋監督『東南角部屋二階の女』、山戸結希監督『溺れるナイフ』、瀬々敬久監督『8年越しの花嫁』、中田秀夫監督『終わった人』など。

サウンドデザイン領域

 

 

映像表現におけるサウンドデザインの実践的かつ実験的な表現を学ぶ

サウンドデザイン領域では、「映像作品におけるサウンドデザイン」に特化した教育・研究活動を行っています。
具体的な授業内容は(他領域との共通授業を除く)、
1.ゼミの演習において映画の現場録音から整音作業に至るまでに必要な音響機器の知識を深め、その技術を習得する。
2.ゼミの講義において「サウンドデザイン」という観点から映像表現についての知識を深め、「自分にとってのサウンドデザイン観」を構築する。
3. 実習(映画作品を制作する)を重ねることにより、映像業界の音響プロフェッショナル、サウンド・アーティスト、映像音楽家などになるための具体的なスキルを学び、習得する。

以上から成り立っています。また、生徒が独自研究をできるように、MA室、録音機材などを可能な限り使用することができる「自由な場」としてもサウンドデザイン領域は存在したいと考えています。言い換えると、当領域は映像表現におけるサウンドデザインの「実践」かつ「実験」の場でありたいということです。

 

 

長嶌

映画制作技術 サウンドデザイン領域
長嶌 寛幸 教授

1966年生まれ。大学在学中に石井聰亙監督の映画音響ライブ・リミックスを行った事がきっかけで、メディアを問わず多数の作品の音楽、音響を手掛けるようになる。主な映画作品には石井聰亙『エンジェル・ダスト』、大友克洋『メモリーズ エピソード3 ~ 大砲の街』、青山真治『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』『サッド ヴァケイション』、万田邦敏『接吻』『ありがとう』、篠崎 誠『SHARING』、高橋洋『恐怖』などがある。また、電子音楽グループ『Dowser』、『Shinigiwa」としての活動も行っている。

編集領域

 

 

デジタル化においても監督の意図以上の表現ができる編集者を育成する

映画の編集とは何でしょう。撮影前のコンテに沿って撮られたラッシュ、偶然映り込んだ何か、無秩序な映像素材。それらのものをある流れにまとめ、それぞれの映像を呼吸できるように生かしていくことだと考えています。 フィルムから、デジタルへと移っても、映画編集に求められていることが変わるわけではありません。素材を深く読み込み、対話し、作品の主題を発見するといった、映画編集に求められていることが変わるわけではありません。これはつながるのか、つながらないのか。 そのためには、映画内に限らず、映画外の知識も必要となってきます。表現すべき者が身体的に把握することで、テクニックは後でついてくるでしょう。 映画のデジタル化によって、誰もが簡単に編集できる時代になったからこそ、編集者の立ち位置はかえって困難になっています。デジタル化によって、監督自身が編集できる時代に、監督の意図以上の編集ができるか。編集領域は、フィルム編集も体験して、つなぐことの基本を覚えたうえで、現在の映画環境に対応できる編集者を育成していきます。

 

 

筒井

映画制作技術 編集領域
筒井 武文 教授

映像研究科映画専攻長、編集領域教授。東京造形大学時代より、映画製作を開始。87年サイレント映画『ゆめこの大冒険』で劇場デビュー。編集、監督の仕事の傍ら、映画批評を多数執筆。現在、「キネマ旬報」誌で、新作レビューを連載中。主な監督作品に、『オーバードライヴ』(04)、『バッハの肖像』(10)、『孤独な惑星』(11)。新作に『自由なファンシィ』『映像の発見=松本俊夫の時代』がある。