Screening and Talk Session 「現代美術とエッセイフィルム」
2025.11.26
たとえば、カメラを通して世界を記録するだけでなく、「なぜこう見えるのか」「この出来事をどう語るのか」といった問いを、映像そのものに込めていくこと。それが「エッセイフィルム」と呼ばれる表現です。
上映される映像作家・鈴木光の新作『FUKUSHIMA BERLIN 後景 2011–2025』は、東日本大震災のあと、福島とベルリンという二つの場所を行き来しながら製作された映像作品です。この作品は、出来事をただ写すのではなく、歴史を記述し、そこからもう一度語り出すきっかけを生み出す形式としてつくられています。映像の中では、人の声や沈黙、風景や記憶が重なり合いながら、新しい問いが立ち上がっていきます。
上映のあとには、RAMに参画する新進気鋭の映像作家の方々が集まり、「映像で考えるとはどういうことか」「芸術は社会とどう関わるのか」といったテーマについて語り合います。少し難しそうに聞こえるかもしれませんが、ここで話されるのは、「いま、この時代をどう見つめ、どう語り継いでいくか」という、どなたにとっても大切なテーマです。
RAM Association は、このイベントを通して、映像が生み出す「新しい公共の場」について考えます。
アートフォームとしてのエッセイフィルムは、知の制度と歴史の残骸のあいだで『思考の自由』を探す、映像による哲学でもあります。けれどそれは、決して難しい理論の話だけではなく、「世界を自分の目で見て、自分の言葉で考える」ための出発点なのです。
そして、もしあなたが「考えること」や「感じること」に少しでも興味があるなら、ぜひ会場に足を運んでください。この時間と空間のなかで、映像とともに考えることの楽しさを、きっと感じていただけるはずです。
■ 日時・会場
日時:2025年11月29日(土)14:00–18:00
会場:東京藝術大学大学院映像研究科 元町中華街校舎 3F 多目的スタジオ
https://newmedia.geidai.ac.jp/post/85/
入場:無料(事前登録制)
対象:どなたでも参加可
■ 上映作品
『FUKUSHIMA BERLIN 後景 2011–2025』(2025年/100分/監督:鈴木光)
テーマ:現代美術とエッセイフィルム――映像の思考と語りのあいだで
登壇者:
● 鈴木 光(映像作家/帝京平成大学専任講師/東京藝術大学大学院映像研究科博士後期課程在籍)
● 玄 宇民(映像作家/RAMフェロー)
● 松本 桂(映像作家/RAM研修生)
● 桂 英史(東京藝術大学大学院映像研究科教授/RAMプロデューサー)
■ 主催・助成
主催:東京藝術大学大学院映像研究科 RAM Association
助成:文化庁「大学を活用した新進芸術家育成事業」(2025年度)
RAM Association は、東京藝術大学大学院映像研究科が実施するノンディグリープログラムとして設立され、映像を軸に芸術・社会・思想を横断する新しい学びと創造のプラットフォームを提供しています。
2025年度は文化庁の助成を受け、若手アーティストの育成と国際的な芸術交流の促進を目的として活動を展開しています。
■ お問い合わせ
● お問い合わせ:ram-office@fm.geidai.ac.jp(RAM Association事務局)
● 公式ウェブサイト:http://geidai-ram.jp/
■ 出演者プロフィール
鈴木光(Hikaru Suzuki)
映像作家
1984年生まれ。映像作家∕アーティスト。2008年より作品の発表を開始。現在、東京藝術大学大学院映像研究科博士後期課程映像メディア学専攻在籍。美術と映像がクロスするエッセイフィルムについて研究している。2019年より映像上映団体「Experimental Film Culture in Japan」(http://efcjp.info/)を石川多摩川および西澤諭志と共に運営している。
Hikaru Suzuki
http://hikarusuzukifilm.work/
玄宇民(woominhyun)
映像作家
1985年東京生まれ。近現代史を背景にした生まれた地を離れた人々のありようと移動の記憶をテーマに映像作品を制作。主な作品に『to-la-ga』(2010)、『OHAMANA』(2015)、『未完の旅路への旅』(2017)、『逃島記』(2019–2022) など。ソウル独立映画祭(韓国)、「Young Korean Artist 2021」(韓国国立現代美術館、果川)、ソウル市立美術館、TOKASなどで作品展示・上映。
東京大学文学部美学芸術学専修卒業。東京藝術大学大学院映像研究科修士課程メディア映像専攻修了、同博士後期課程映像メディア学修了。博士(映像メディア学)。2025年度 RAM Association フェロー。
https://woominhyun.com/
松本 桂 (Kei Matsumoto)
映像作家
1997年生まれ
多摩美術大学 卒業
東京藝術大学大学院映像研究科修士課程メディア映像専攻 修了
2025年度 RAM Association 研修生
最新作は土間修復の過程を記録した短編映画『三和土』(2025)
© 2025 Tokyo University of the Arts, Graduate School of Film and New Media / RAM Association
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